自由貿易協定RCEP加入で、フィリピンはどうなるか?

フィリピンの上院は、世界人口のほぼ3分の1と世界の国内総生産の約30%をカバーする世界最大の自由貿易協定RCEPの下で、関税を段階的に引き下げることを支持しました。
賛成20票、反対1票、棄権1票で、上院は3回目の投票で、地域包括的経済連携(RCEP)の批准に同意する決議を承認しました。
このRCEPの批准には、2020年11月にフィリピンがオーストラリア、中国、日本、韓国、ニュージーランド、および東南アジア諸国連合(ASEAN) のメンバーである14か国とのメガ貿易協定に署名してから2年以上が経ちました。
RCEPは2021年9月に当時のドゥテルテ大統領によって批准されましたが、上院は、この協定が農業部門に与える悪影響を懸念して同意しませんでした。
農務大臣も務めるマルコス大統領は、RCEPの上院での緊急承認を求めてロビー活動を行っていました。
大統領の妹であるマリア・イメルダ・“イミー”・R・マルコス上院議員は、農家や困窮している人々を引き合いに出して、この協定は小規模な農家には利益をもたらさないと信じていたため、投票を棄権しました。
一方、上院は、フィリピンが利用できる例外と移行期間を最大限に活用し、フィリピンに有害なRCEP条項を実施しない旨を要求する条項を含めました。
上院はまた、RCEPからの脱退を大統領に勧告する権限を持たなければならないとしています。
RCEPへの加盟により、2031年までに140万人の雇用が創出されると予測されています。
また、アジア開発銀行の調査は、フィリピンがRCEPに参加した場合、農業で308,490の雇用、そのほか産業で77,683の雇用、サービスで991,000の雇用が創出されるとしています。
一方、RCEPへの不参加は実質国内総生産(GDP)の0.26%の減少につながる可能性があるとされ、RCEPに参加することで、国のGDPを2%増加させることができるとしています。
フィリピンは、RCEPを批准した15の加盟国の中で最後となりました。
これにより、フィリピンが再び投資家の注目を集めるようになるという意味で、その効果はすぐに現れると考えられます。
マカティ ビジネス クラブは、RCEPは企業の海外進出、経済の強化、雇用創出の促進に役立つと述べています。
上院は、RCEPの実施を監視するための監視委員会の創設など、いくつかの保護手段を盛り込んむと共に、密輸を抑止するための適切な国境検査と検疫管理を確保するための規定も入れ込みました。

RCEPへの参加で、国際競争にさらされるフィリピンの農業への懸念が指摘される中、先進的な農業への取り組みも出てきています。
三井物産も出資を検討しているインフラ系財閥メトロパシフィックインベストメンツのアグリビジネス部門は、イスラエルを拠点とするLRグループと提携して、野菜温室栽培施設に約8億ペソから10億ペソを投資する予定です。
この施設は年間1,600トンの野菜を供給する計画です。

温室施設であるメトロ・パシフィック・フレッシュ・ファームズ(MPFF)は、国内最大規模と言われ、12か月後には、ブラカン州サン ラファエルの22ヘクタールの土地に設置される予定です。
テクノロジーを活用し、過去のボトルネックを解消する時が来たとしています。
この温室栽培プロジェクトは、はるかに大規模なプラットフォームを立ち上げ、構築するための最初のステップであり、フィリピン人の食生活を根本的に変える大きなエコシステムの一部にすぎないとしています。
敷地内の最大15ヘクタールはMPAVの灌漑センター、物流倉庫、梱包施設、エネルギー施設に使用され、残りの7ヘクタールは2つの温室に使用されます。
MPFFは、マニラ首都圏と近隣の州にサービスを提供し、農場から食卓に農産物を提供します。
マニラ首都圏の野菜需要は非常に大きく、この施設は、ほんの小さな需要にしか対応できず、これはほんの始まりに過ぎないとしています。
将来的には、この施設もっと必要になり、目的の一部は、地元の農家に自分でこの施設を活用する方法を教えることも指摘しました。
MPFFは最新のテクノロジーを活用することにより、 水と土地を90%削減し、肥料と農薬を90~99%削減することが期待され、野菜の生産コストを劇的に削減すると言われています。
MPICは、さまざまな農業ベンチャーに投資してきました。
これは、乳製品会社Carmen’s Best Groupの買収と、最近のココナッツ製品メーカーAxelum Resources Corpへの35%の出資株式です。
同社の次のベンチャーとして、CEOのパンギリナン氏は、温室施設に植えることができない農産物、例えば米やサトウキビの大規模農業に参入することを目指していると語っています。
本当の課題は、大規模な農業に参入することで、想定され規模とコストを達成するには、十分なヘクタールが必要ですともパンギリナン氏は言いました。

今回は、フィリピンの自由貿易協定RCEPへの加入の最新の動きと、そこで懸念される脆弱な農業分野の革新するビジネス動向についてレポートしました。

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