ドゥテルテ氏、副大統領選へ 与党公認で出馬、権力維持見据え

フィリピンの与党PDPラバンは24日、2022年5月に実施される予定の副大統領選に、ドゥテルテ大統領が党の公認候補として出馬すると発表した。ドゥテルテ氏は22年に任期を迎えるが、再選は憲法で禁止されている。副大統領として次期政権への影響力を強め、自身の権力を維持したい思惑が透ける。
22年5月に予定される統一国政・地方選挙では、大統領とは別に副大統領が選ばれる。PDPラバンは同党議長でもあるドゥテルテ氏に副大統領選に出馬するよう要請し、同氏が受け入れた。国民から人気の高いドゥテルテ氏を候補にすることで、与党の座を盤石にしたい考えとみられる。
ドゥテルテ氏はこれまで、引退をほのめかしたり、出馬することを示唆したりするなど態度を明確にしていなかった。今回の発表について、政治評論家のラモン・カシプル氏はNNAに対し「想定の範囲内だ。ドゥテルテ氏は大統領の任期後も権力の座を維持したいのだろう。批判が出ている麻薬取り締まりへの追及をかわす狙いも透ける」と指摘した。
1960~80年代のマルコス独裁政権のような長期の権力維持を回避するため、フィリピンは憲法で大統領の任期を1期6年と定め、再選を禁じている。現職大統領が次期副大統領になるのは可能だが、異例の選択を懸念する声もある。
ドゥテルテ氏が副大統領選への出馬を受け入れていることに関し、フィリピン大学政治学部のジーン・フランコ助教授は「出馬を受け入れたのは民主主義に対する挑戦になる」と警鐘を鳴らす。
今後の焦点はPDPラバンが大統領候補に誰を指名するかになる。下馬評では別の政党に所属する娘のサラ・ドゥテルテ氏(南部ダバオ市長)を推す声が多い。ただ「世襲制」「院政」など有権者には悪いイメージもある。サラ氏は出馬に意欲を示しているが、まだ態度を決めていない。ドゥテルテ氏の最側近であるボン・ゴー上院議員も有力候補の1人とされる。
一方、PDPラバンも一枚岩ではない。同党所属で大統領選への出馬が有力視されるプロボクサーで上院議員のパッキャオ氏は、ドゥテルテ氏と対立している。党内ではパッキャオ氏を追放する動きもある。
フィリピンの世論調査機関パルス・アジアの7月調査では、副大統領で誰に投票するかとの質問でドゥテルテ氏が18%を占め首位だった。出身地である南部ミンダナオ地方では35%とさらに高くなる。一方、大統領選ではサラ・ドゥテルテ氏が28%で最も人気が高い。パッキャオ氏は8%と5位にとどまる。
ほかにもラクソン上院議員が大統領選に出馬する意向を明らかにしている。ソット上院議長を副大統領候補として選挙戦に臨む構えだ。
大統領と副大統領の候補には、フェルディナンド・マルコス元上院議員(マルコス元大統領の長男)、マニラ市のイスコ・モレノ市長、前回の大統領選で敗北したグレース・ポー上院議員らの名前も挙がっている。

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この記事の監修

家村均
家村均

一般社団法人 フィリピン・アセットコンサルティング
エグゼクティブ・ディレクター
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慶応義塾大学経済学部卒業後、東急に入社し、海外事業部にて、米国・豪州・ニュージーランド・東南アジアなどで不動産開発や事業再構築業務に従事。
また、経営企画部門にて東急グループの流通・メデイア部門の子会社・関連会社の経営・財務管理を実施した。(約15年)
その後は、コンサルティングファーム(アクセンチュア)や投資ファンド(三菱UFJキャピタル)などで、企業や自治体の事業再構築、事業民営化等の支援や国内外のM&A案件のアドバイザリーを実施し、2018年10月より、GSRにて、日本他の投資家および企業、ファンドなどに対してフィリピン不動産への投資や事業進出のアドバイザリーを行っている。

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