フィリピン政府、3本の主要鉄道建設に関して、中国からの資金調達を見送り、日本、韓国、インドからのODAなどを模索


フィリピン政府は、中国からの資金提供を見送った後、日本、韓国、およびインドからのODAを活用し、3つの主要な鉄道プロジェクトを推進する可能性を検討しています。
この動きは、フィリピンの運輸大臣が、進捗が不十分であるためとして、中国からのODA要請を取り下げたことに端を発しています。


代替の資金源として、韓国、日本、インドからのODAのほか、世界銀行、アジア開発銀行(ADB)、JICAからの資金調達も検討されています。
フィリピンの財務大臣ディオクノ氏は、Mindanao鉄道プロジェクトの第1フェーズについて、2024年第1四半期までにファイナンスを確定できる可能性があると述べています。このプロジェクトについて、日本やADBからの公式開発援助を活用することが検討されており、すでに実現可能性の調査が完了しています。


Mindanao鉄道プロジェクトの第1フェーズは、総額830億フィリピンペソの予算で、1日に約12万2,000人の乗客を輸送し、タグムとディゴスの間の所要時間を3時間から1時間に短縮します。
Mindanao鉄道プロジェクトにソブリンウェルスファンド・マハリカ投資基金(Maharlika Investment Fund、MIF)を通じて資金を調達できる可能性について尋ねられた際、ディオクノ氏は、これは可能性の一つであると述べましたが、sovereign wealth fundによって全ての資金が提供されるわけではないと述べました。


また、Subic-Clark鉄道(500億フィリピン)およびフィリピン国鉄(PNR)の南部長距離鉄道(1,420億フィリピンペソ)の中国への資金要請も回し、他の資金源を探る必要があると述べました。
これらの鉄道プロジェクトの資金調達における遅れにもかかわらず、バウティスタ運輸大臣は、2028年までにこれらの鉄道プロジェクトを完了する予定であると述べています。

フィリピン政府は、ソブリンウェルスファンド・マハリカ投資基金MIFの実施規則と規定(IRR)を改善するための一時停止からわずか1か月でIRRを最終化しました。MIFは、国の発展のための資金を管理するために設立された新しい国営ファンドです。マルコス大統領は、IRRの最終化が完了したことを発表し、承認され次第、MIFの運用を迅速に開始する意向を表明しました。IRRの一時停止は、国営銀行のLANDBANKとDBPが、初期資金としてそれぞれ500億フィリピンペソと250億フィリピンペソを既に納付した後に発令されました。一時停止の理由は、透明性と説明責任が備えられるように、IRRが慎重に検討される必要があるというマルコス大統領の意向がありました。


一方で、経済学者たちは、IRRの一時停止は、マルコス大統領がマハリカ投資基金の最高経営責任者(CEO)の任命に影響を与えるためのものである可能性があると指摘しました。
また、IRRには外国または国内の民間投資家が基金に投資する方法に関する指針が不足しているとの懸念を表明しました。一時停止されたにもかかわらず、マルコス大統領は、MIFが年内に稼働する意向を繰り返し示しています。この基金は、国の基盤となるインフラプロジェクトの実施を加速するために使用され、その価値は約1530億ドルに相当します。MIFへの投資は、急成長するフィリピンを、ポートフォリオを多様化したい国内外の株式投資家から資金を集め、環境、社会、企業のガバナンス(ESG)に関連する投資機会を提供するとみられています。

今週は、フィリピンの主要鉄道建設への中国からのファンディングが頓挫する中、日本、韓国、インドあるいは世界銀行、ADBなどのグローバル公的金融機関からの資金調達を目指す動きと、同じくフィリピンのインフラ投資を加速させるであろうソブリンウェルスファンドの最新の動きについてレポートしました。

この記事の監修

家村均
家村均

一般社団法人 フィリピン・アセットコンサルティング
エグゼクティブ・ディレクター
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慶応義塾大学経済学部卒業後、東急に入社し、海外事業部にて、米国・豪州・ニュージーランド・東南アジアなどで不動産開発や事業再構築業務に従事。
また、経営企画部門にて東急グループの流通・メデイア部門の子会社・関連会社の経営・財務管理を実施した。(約15年)
その後は、コンサルティングファーム(アクセンチュア)や投資ファンド(三菱UFJキャピタル)などで、企業や自治体の事業再構築、事業民営化等の支援や国内外のM&A案件のアドバイザリーを実施し、2018年10月より、GSRにて、日本他の投資家および企業、ファンドなどに対してフィリピン不動産への投資や事業進出のアドバイザリーを行っている。

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