世界銀行などの国際機関は、フィリピンの経済成長をどう見ているのか?

世界銀行(WB)は、フィリピンが今年、東南アジアで最も高い経済成長率を達成する国の一つになると予測しています。最新のグローバル経済見通しで、WBは2024年のフィリピンの国内総生産(GDP)が5.8%拡大すると予測しました。これは、昨年12月の予測と同じです。フィリピンの成長予測は、東南アジアの中で最も高く、カンボジア(5.8%)と並び、ベトナム(5.5%)、インドネシア(4.9%)、マレーシア(4.3%)、ラオス(4.1%)、東ティモール(3.5%)、タイ(3.2%)、ミャンマー(2%)を上回っています。ただし、これは2024年のフィリピン政府機関・発展予算調整委員会(DBCC)の成長目標である6.5-7.5%には及びません。フィリピンの成長予測は、東アジア・太平洋地域全体の4.5%の予測を上回ります。WBは、中国の経済活動の減速が原因で、この地域全体の成長が鈍化すると予測しています。成長見通しへの他のリスク要因としては、中東の地政学的緊張が原因で原油価格が上昇し世界の貿易が停滞すること、金融引き締めの継続、気候関連の災害の発生が挙げられています。フィリピンでは、政府がエルニーニョの影響に備えています。国立経済開発庁(NEDA)のバリサカン長官は、エルニーニョが農業部門に影響を与え、食料価格の上昇を引き起こす可能性があると述べています。一方で、WBは、東アジア・太平洋地域では、堅調な国内需要が成長を促進する可能性があると述べています。減速するインフレや活発なサービス活動に支えられた強力な労働市場が、家計支出を維持する見込みとしています。

 

フィリピンと中国の南シナ海を巡る紛争が拡大する可能性があり、それがアジア太平洋地域全体に広がる影響を持つ可能性があると、ムーディーズ・インベスターズ・サービスが指摘しました。中国とフィリピンの緊張は、マルコス政権の下で増しています。2016年には、国際連合支援のもとでの仲裁裁判所が中国の南シナ海へのほぼ全体的な主張は法的根拠がないと結論づけましたが、北京はその判決を無視し、島の建設活動を継続しています。ムーディーズは、北朝鮮と韓国間の敵対行動の可能性や、インドネシアとインドの選挙など、アジア太平洋地域におけるいくつかの地政学的リスクにも注目しています。一方で、フィリピンの安定した国内消費は、中国経済の減速、グローバルな需要の低迷、資金調達の制約といった要因の影響を和らげるであろうと述べています。ムーディーズはアジア太平洋地域の信用格付けの見通しを2024年についてネガティブとし、中国経済の減速、弱い外部需要、グローバルな信用状況の制約が背景にあるとしています。

中国のGDPは、2023年の4.2%の成長から、2024年と2025年には4%に減速すると予想しています。アジア太平洋地域の輸出が米国とヨーロッパでの成長が鈍化することで弱体化する可能性も指摘しています。

 

フィリピンの輸出は11月に3ヵ月連続で減少しました。貿易相手国の上位は米国、日本、中国であり、輸出額はそれぞれ16%、13.2%、12.3%の割合でした。

 

最後に、ムーディーズは地域内の財政赤字が広がり続けており、各国政府がインフラ整備や高インフレ対策のために支出を増加しつつ、税収を増やすためにデジタル化の恩恵を利用していると指摘しています。アジア太平洋地域の中央銀行は、需要圧力がそれほどないにもかかわらず、緊縮的な政策を続けており、ムーディーズはこれが引き続き金利を押し上げる要因となる可能性があると述べています。

 

今回は、世界銀行とムーディーズという国際機関が、フィリピンそして世界、アジア経済が2024年どのように動いていくとみているのかをレポートしました。

この記事の監修

家村均
家村均

一般社団法人 フィリピン・アセットコンサルティング
エグゼクティブ・ディレクター
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慶応義塾大学経済学部卒業後、東急に入社し、海外事業部にて、米国・豪州・ニュージーランド・東南アジアなどで不動産開発や事業再構築業務に従事。
また、経営企画部門にて東急グループの流通・メデイア部門の子会社・関連会社の経営・財務管理を実施した。(約15年)
その後は、コンサルティングファーム(アクセンチュア)や投資ファンド(三菱UFJキャピタル)などで、企業や自治体の事業再構築、事業民営化等の支援や国内外のM&A案件のアドバイザリーを実施し、2018年10月より、GSRにて、日本他の投資家および企業、ファンドなどに対してフィリピン不動産への投資や事業進出のアドバイザリーを行っている。

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