フィリピン中央銀行・金融政策変更?

フィリピンの銀行の準備預金率(RRR)の引き下げは、新型コロナウイルスパンデミックの中で銀行に与えられた救済策の期限切れとタイミングが重なるため、流動性への影響は最小限であると見られています。

フィリピン中央銀行のメダラ総裁は、モネタリーボードが6月30日から大手銀行や準銀行金融機関の預金準備率を250ベーシスポイント(bps)引き下げて9.5%にすると発表しました。

デジタルバンクの比率も200ベーシスポイント引き下げて6%に、貯蓄銀行の比率も100ベーシスポイント引き下げて2%に、農村および協同組合銀行の比率も100ベーシスポイント引き下げて1%に引き下げられます。

これらの引き下げは、マイクロ・小規模・中規模企業(MSME)への融資を準備要件の代替としてカウントするというパンデミックの救済策の期限切れと重なります。

フィリピンの銀行のRRRは、東南アジア諸国連合(ASEAN)で最も高いままですが、2018年には20%だったことから見ると、大幅に資金の流動性は高まっています。

MSMEへの融資をRRRとみなすという代替コンプライアンスの期限切れにより、約2,724億ペソ(約49億ドル)の流動性が吸収され、RRRの250ベーシスポイントの引き下げにより約3,601億ペソの流動性が供給されるという相殺現象が発生し、流動性供給の純効果は877億ペソになりますが、この金額は、BSPが現在吸収している余剰流動性のわずか6.3%に過ぎず、影響は限定的と見られています。

また、RRRの引き下げが発効するタイミングで、BSPが56日間の債券を発行するため、実際には、RRRの引き下げによって供給される流動性は、同じ日に発行される短期債券に吸収される可能性が高いと見られています。

したがって、RRRの引き下げによる為替市場への影響も小さいと見られています。フィリピンペソは、現在不安定な状態にありますが、これは、ドルの強さ、フィリピン経済のパフォーマンス、貿易レベル、金利の安定など、いくつかのファクターに依存しています。

ペソは過去数か月間にドルに対して弱含みとなっており、米連邦準備制度理事会(FED)の将来の政策動向に関する混合シグナルや、米国の債務上限問題がが影響しています。

先月、BSPのモネタリーボードは政策金利の引き締めを一時停止し、第3四半期まで基準金利を据え置く意向を示しました。一方、米連邦公開市場委員会(FOMC)は先月、25ベーシスポイントの利上げを行い、Fed基金利を5〜5.25%に引き上げました。

今後は、BSPの利下げのタイミングが注目されてきました。救済策が期限切れでなければ、今回のRRRの引き下げは、インフレがまだ高止まりする中、鷹派的なシグナルを市場に送ることになりますが、今回のRRRの引き下げは、BSPの金融政策の変化を意味しないとの見方が多いようです。

BSPは、インフレが第4四半期に中央銀行の2〜4%の目標に戻るという予測の元で、状況をみているとされてます。
実際に、5月には、インフレは4か月連続で緩和し、6.1%となりました。これは、1年ぶりの最低水準ですが、まだ、中央銀行の2〜4%の目標範囲を大きく超えています。

米中央銀行FRBと足踏みを揃えてきた、フィリピン中央銀行(BSP)ですが、今後もFRB同様に、これから出てくるインフレの数値や米・ペソの為替の動きを見極めながら、政策金利の調整他金融政策を行っていくでしょう。

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