日本格付研究所がフィリピンの格付けを引き上げ

日本の格付け機関である日本格付研究所(R&I)は、経済の強力なパフォーマンスを理由に、フィリピンの投資格付けを維持し、見通しを「安定」から「ポジティブ」に引き上げました。R&Iは、フィリピンの長期外貨発行体デフォルト格付けを「BBB+」としましたが、これは「A-」格付けにわずかに及ばない格付けです。
R&Iは、「フィリピン開発計画2023-2028」の経済成長路線や安定したマクロ経済状況、改善傾向のある財政状況などの要因が確認されると、格付けを引き上げると述べました。
R&Iによれば、グローバルな不確実性にもかかわらず、フィリピン経済は好調に推移していて、2022年には7.6%の経済成長を達成し、2023年第1四半期には6.4%の成長を記録しました。
今年の政府の国内総生産(GDP)の成長目標は6〜7%です。そして、この数字は、東南アジアで一番大きな経済成長数値です。
R&Iは、インフラ開発プロジェクトの推進などに支えられ、投資も好調に推移しているとし、同時に、政府の債務対GDP比率は2023年から減少すると予想しています。
政府は、債務対GDP比率を、2025年までに60%未満、さらに2028年までに51.1%に削減することを目指しています。
R&Iは、フィリピンの債務負担が増加したとしつつも、その資金需要の大部分が国内市場での債券発行によって賄われており、利払いは管理されていると指摘しています。
また、フィリピンの経常収支赤字は今年縮小すると予想され、対外債務も管理されているとしています。経常収支赤字は、インフラ投資に伴うもので、将来の経済成長をもたらすため、ネガティブな見方とはならないとしています。
フィリピンの格付けは、世界的な格付機関・Moody’s Investors Serviceが「Baa2」、S&P Global Ratingsが「BBB+」、Fitch Ratingsが「BBB」となっていまして、まだ「A」格付けを達成していません。
これらの格付機関はすべて、フィリピンに対して「安定した見通し」を付与しており、次の12〜18ヶ月に格付けの変更は起こらないとしています。

フィリピンは、約3,000億ドル規模のグローバルなビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)市場でのシェアを守るために競争を繰り広げており、高度人材の不足と急速に進化する人工知能(AI)からの競争に直面しています。
世界で2番目に大きなアウトソーシングサービス提供国であるフィリピンは、必要なコミュニケーションと技術スキルを持つ人材比率が低下しているため、今後5年間で80万の雇用機会を逃す可能性があると警笛が鳴らされています。
フィリピンは、国内総生産(GDP)の約8%を占めるこの産業での優位性を失うリスクがあり、他の新興国がシェアを狙う中で激化する競争に直面しています。
また、COVID-19パンデミック以降、AIを搭載したボットによってアウトソーシングの仕事が相当程度奪われているという現実もあります。
英語の話せる人材が多いというフィリピンの強みは、1990年代のBPO産業の登場以来、コールセンター大国としての台頭を支え、中間層の拡大に寄与してきました。しかし、その優位性が弱まっており、世界銀行のデータによれば、10歳までに簡単なテキストを理解して読むことができないフィリピンの子供は10人中9人に上るとされています。
また、フィリピンは、プログラミングやトラブルシューティングといった情報技術スキルにも不足しており、最新のBPO業界の要求に対応仕切れていないとされています。
パンデミックの間、フィリピンのアウトソーシング業界は25.5万の追加雇用を作りましたが、世界全体のBPO産業の成長率からは1%程度低い成長となりました。
これは、インドや南アフリカ、エジプト、ポーランド、コロンビア、コスタリカなどの新興国にシェアを取られている可能性があります。
課題の一部は、雇用可能性の低さです。業界団体によると、アウトソーシングの求人に対して10人中1人しか雇用されていないとされています。
技能レベルのキャッチアップは、人工知能が世界中の産業に影響を与える可能性があるため、ますます緊急の問題となっています。
アジア開発銀行によると、AIは2030年までにフィリピンのアウトソーシング産業の約4分の1の人々の仕事を置き換える可能性があるとしています。
つまり、BPOの従事者は新しい技術を効率的に使用する方法を学ぶ必要があります。そして、業界団体は「準備するための時間はあるが、時間は短くなっている」としています。
これらの課題にもかかわらず、業界団体は、2022年のBPO雇用者数157万人から2023年には6%〜7%の増加を見込んでおり、売上も7%〜8%成長し、約350億ドルになると予想しています。
業界団体はまた、フィリピンの高等教育委員会と連携し、IT教育プログラムを現在のトレンドに合わせて再構築し、BPO産業での能力を開発する取り組みを行っているとしてます。
BPO産業は、2028年までに110万人の新たな雇用を創出し、250万人の従業員を持つ590億ドルの産業となる計画を立てています。同産業はGDPへの貢献をほぼ9%に増やすことを目指しており、欧州でのシェア拡大を狙っています。

今週は、格付機関によるフィリピン経済見通し改善の動きと、この経済成長を支える主要フィリピンの主要産業であるBPO産業の抱える課題についてレポートしました。

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