フィリピン中央銀行(BSP)は、インフレが2〜4%の目標範囲に戻るまで、準備率要件比率(RRR:Reserve Requirenment Ratio)の調整を待つ必要があるとアナリストたちが指摘しています。新BSP総裁のレモロナ氏は、依然として銀行のRRRを引き下げる計画があるものの、実施時期は不確定だとしています。
レモロナ氏は、金融緊縮モードの間は、一貫性がなくなるので、準備率要件を引き下げる意味があるとは思いわないと、8月17日の中央銀行政策決定会合の後のブリーフィングで語りました。
8月17日の中央銀行政策決定会合は、3回連続でタカ派の政策姿勢を維持し、政策金利を6.25%に据え置きました。これはほぼ16年ぶりの高水準です。
BSPは、2022年5月から2023年3月までに425ベーシスポイントの利上げを行い、インフレを抑制しています。
RRRとは、銀行が貸し出すのではなく、BSPへの預金として保持しなければならない予備金の割合です。
2023年6月、BSPは大手銀行および準銀行業務を持つ非銀行金融機関向けの比率を250ベーシスポイント引き下げて9.5%にしました。また、デジタルバンク向けの比率も200ベーシスポイント引き下げて6%、および貯蓄銀行、農村銀行、協同組合銀行向けには100ベーシスポイント引き下げてそれぞれ2%と1%にしました。
BSPは、大手銀行のRRRを2018年の20%から今年にかけて一桁台にまで引き下げました。
インフレが目標範囲内の2〜4%に達した後、銀行のRRRをさらに引き下げると、貸出活動が増加し、より大きな融資と高い経済成長が促進される可能性があります。
8/17に、BSP総裁として初めての政策会議を主宰したレモロナ氏は、次回の会議では、まだ金融緩和は見込まれないとしています。
フィリピンの経済は第2四半期に+4.3%となりましたが、これは2年ぶりの低成長です。上半期のGDP成長率は+5.3%となり、政府の6-7%の目標を下回っています。
フィリピンの財政赤字対GDP比率が、2022年同期の6.5%から、2023年6月末時点で4.8%に低下しました。これは一見良い動向のように見えますが、これは主に政府の支出不足によるものであり、経済成長を促進するためのものではないため、経済アナリストたちは懸念すべき要因だと指摘しています。
フィリピンの経済成長率は、第2四半期に4.3%となり、前四半期の6.4%や前年同期の7.5%に比べて大幅に鈍化しました。これは主に消費の低迷と政府支出の減少が原因です。特に交通インフラ整備計画(Build Better More)など重要プロジェクトの遅れは、経済成長の足枷となります。
第2四半期の政府支出は7.1%減少し、前年同期の+10.9%と前四半期の+6.2%からマイナスに転じました。
GDPが大きく増加している場合、低い財政赤字対GDP比率はポジティブな指標となりますが、GDP成長が鈍化しているケースでは、低い比率はネガティブな指標となることもあります。
マルコス大統領は、政府支出の停滞に対処するため、政府機関に対して予算を効果的に活用し、支出を加速させるためのキャッチアップ計画を策定するよう指示しています。
政府は、財政の健全化と経済成長への投資のバランスを取る必要があります。この舵取りが上手くできれば、今後の数年間のより強靭な成長エンジンが確保されることになります。
政府は、今年のGDP成長を6〜7%、2024年から2028年までの成長を6.5〜8%を目指しています。
また、政府は2025年までに債務対GDP比率を60%未満にすることを目指し、2028年までに財政赤字対GDP比率を3%に削減することを目指しています。
政府支出を効率的かつ迅速に行うという方針は、ドゥテルテ政権の支出を控えるという方針からの大きな転換です。
マルコス政権は、経済成長により重点をおいた政策に転換していますので、年末までに財政赤字比率が増加する可能性があります。
今回は、金利コントロールとは別のフィリピン中央銀行の金融政策の動向とマルコス政権が取り組む財政支出と財政健全化の舵取りについてレポートしました。
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