GDP11.8%増、プラス転換 4~6月期、コロナ前には届かず

フィリピン統計庁(PSA)は10日、2021年4~6月期の実質国内総生産(GDP、速報値)が前年同期比11.8%増加したと発表しました。新型コロナウイルスの影響で経済が打撃を受けた2020年1~3月期以降マイナス成長が続いていましたが、6四半期ぶりにプラスに転じました。ただ新型コロナが発生する前の19年4~6月期と比べると7.2%下回り、国内経済はまだ回復の途上です。
2021年4~6月期のGDPは、コロナの影響で17.0%減と過去最悪の下落幅を記録した前年同期の反動で、1988年10~12月期以来の高い伸び率となりました。国家経済開発庁(NEDA)のチュア長官は10日の記者会見で「経済活動を大規模に停止することなく、感染対策との両立が進んだことで大幅なプラス成長となった」と説明しました。
21年3月末~5月は外出・移動制限が厳格化されましたが、活動できる業種を増やして公共交通機関の運行も続けるなど、同様の措置が敷かれた2020年3~5月よりも経済活動に配慮しました。ワクチン接種が企業の従業員にも広がったことや、4月に施行された企業復興税優遇法(CREATE)により、法人税率が下がったこともプラス要因となりました。
4~6月期は大半の分野でプラス転換しました。GDPの約7割を占める個人消費は7.2%増え、5四半期ぶりにプラスに転じました。政府が公共投資を増やしたほか、企業活動なども大幅に持ち直し、建設は33.4%増、設備投資は89.2%増えました。輸出も27.0%増と好調でした。
統計庁は1~3月期のGDPを4.2%減(速報値)から3.9%減に改定しました。4~6月期はプラス成長に転じたものの、先行きは見通せません。マニラ首都圏では今月20日までの約2週間にわたり、最も厳しい外出・移動制限が敷かれています。7~9月期に再びマイナス成長に転じる恐れもあります。
政府は2021年通年のGDPが前年比6.0~7.0%増になるとの見通しを示しています。統計庁は予測の下限範囲に収まるには、7~12月期に前年同期比8.2%の成長が必要になると指摘しました。チュア氏は「予測に到達できるかは、現在の厳しい制限措置が敷かれる期間による」との見方を示しました。

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この記事の監修

家村均
家村均

一般社団法人 フィリピン・アセットコンサルティング
エグゼクティブ・ディレクター
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慶応義塾大学経済学部卒業後、東急に入社し、海外事業部にて、米国・豪州・ニュージーランド・東南アジアなどで不動産開発や事業再構築業務に従事。
また、経営企画部門にて東急グループの流通・メデイア部門の子会社・関連会社の経営・財務管理を実施した。(約15年)
その後は、コンサルティングファーム(アクセンチュア)や投資ファンド(三菱UFJキャピタル)などで、企業や自治体の事業再構築、事業民営化等の支援や国内外のM&A案件のアドバイザリーを実施し、2018年10月より、GSRにて、日本他の投資家および企業、ファンドなどに対してフィリピン不動産への投資や事業進出のアドバイザリーを行っている。

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