フィリピン、外資規制緩和と国際収支の現状

フィリピンでは、電気通信、航空、鉄道などのより多くの公共サービスにおいて完全な外国所有を認める法律が、4月4日から施行されます。
85年前の公共サービス法(PSA)を修正する共和国法第11647号の実施規則および規則(IRR)です。
この法改正は、電気通信、国内海運、鉄道、地下鉄、航空、高速道路、有料道路、空港における完全な外国所有を事実上認めています。これらのセクターは、以前は憲法の下で、40%の外国人所有上限が適用されていました。
一方で、送電および配電、上下水道、石油および石油製品のパイプラインシステム、港湾などの他の公共サービス事業は、依然40%の外資制限の対象となります。
本法律改正の元で、電気通信は、国家安全保障上重要なインフラストラクチャと見なされ、外国投資の国家安全保障審査の基準を設定しています。
また、国家経済開発局(NEDA)は、行政機関の要求に応じて、特定の公共サービスを重要インフラと見なすことができます。
関連機関の勧告により、大統領は、外国人または外国法人に支配権が付与される場合、公共サービスへの取引または投資を停止または禁止する権限を与えられます。
元々、この規則には、重要なインフラストラクチャへの外国投資に対する相互主義の要件が含まれていて、外国人は、自国がフィリピン国民に相互主義を認めない限り、重要インフラに分類されるサービスに従事する企業の50%以上を所有することはできませんでした。
各国のソブリンウェルスファンドや年金基金などの機関投資家も、重要インフラとして分類される公共サービスの資本の最大30%をまとめて所有することができます。
この外資規制の緩和措置により、フィリピンはより多くの外国投資を引き付けることができ、特に海運や電気通信などの戦略的産業への投資を後押しできる可能性が高まりました。
一方で、実行性に関しては、行政機関がどれだけ効率的、合理的、かつ公正であるかにかかっています。
今回の資本の自由化は、選択された産業に限定されているため、フィリピンが進めるインフラ開発をどれだけ促進することになるか疑問視する向きもあります。
サプライチェーン全体の中には、40~60%ルールの対象となっている分野が残っている可能性があるからです。
ベンジャミン E. ディオクノ財務長官は、マスメディアや教育機関を例に出し、外国資本に開放できる産業は他にもまだたくさんあると述べています。

フィリピンの国際収支(BoP)が、2月に、8億9,500万ドルの赤字となり、1年前の1億5,700万ドルから拡大し、直近5か月で最大の赤字となりました。
国際収支は、経常収支と金融収支、資本移転等収支に大別され、経常収支はさらに、自動車などモノの輸出から輸入を差し引いた貿易収支、旅行や特許使用料などを対象とするサービス収支、配当・利子のやりとりを示す第一次所得収支、対価を伴わない無償資金援助などの第二次所得収支に分けられます。
2023年1月の国際収支は、30億ドルの国債発行により、30億8,000万ドルの黒字でした。
一方、2月の赤字は、主に中央政府 が外貨債務を決済し、さまざまな支出を支払うために中央銀行(BSP)の預金から資金を引き出したことから生じました。
中央政府の債務残高は1月末時点で13.698兆ペソに達し、12月末の13.419兆ペソより2.1%高くなっています。この内、対外債務は1年前から17.8%増加して4兆3,140億ペソになっています。
国際収支(BoP) は、特定の時点におけるその国の海外との取引を測定します。赤字は、入った資金よりも多くの資金が流出したことを示し、黒字は、より多くの資金がフィリピンに流入したことを示します。
BoPの赤字拡大は、貿易収支の赤字が主な原因です。世界的な商品価格の上昇によって輸入が膨らんでいると共に、フィリピン経済の再開による需要増が、重なっています。
貿易赤字は12月の45億ドルから1月には57億4,000万ドルに膨らみました。輸入が3.9%増加して109億7,000万ドルになったのに対して、輸出は13.5%減少して52億3,000万ドルになりました。
経常収支の悪化は、OFWの送金やBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)の海外売上が、貿易収支の赤字を穴埋めできていないことに起因します。
2022年の経常収支赤字は、2021年の59億ドルから178億ドルに上昇しました。
また、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げサイクルに対する懸念から、不確実性が高まり、資金流出が流入を上回ったことも要因です。
1月の個人送金は前年比3.5%増の30億7,000万ドル、現金送金は27億6,000万ドルに跳ね上がりました。
海外機関投資家やファンドなどの投資は、1月に2億9,212万ドルの純流入を記録しました。
中央銀行の2月末のドルポジションは、前月の1,007億ドルから2.5%減少した982億ドルになりました。これは、7.4か月分の商品の輸入とサービスの支払い、および第一次所得を賄うのに十分です。
また、短期対外債務の5.9倍、全対外債務の3.9倍です。
今後、フィリピンのドルポジションは、OFWからの送金、BPO収入、海外ファンドからの投資、観光収入の継続的な伸びによって支えられる可能性があります。
また、2023年の第2四半期に中央政府が予定している30億米ドルまたはユーロ建ての個人向け債券(少なくとも5年の期間)、国際収支にプラス加算されます。
中央銀行は、2023年末時点で、16億ドルの国際収支赤字(GDPの-0.4%)を予想しています。これは、2022年12月時点での予測54億ドルの赤字(GDPの-1.3%)よりも低くなっています。
フィリピンの国際収支は、2022年に73億ドルの赤字となり、2021年の13億ドルの黒字から反転しました。

今回は、フィリピンへ海外投資がどのように入ってくるかを外資規制緩和の加速と、国際収支や貿易収支の最近の動向の視点で見て参りました。

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