【フィリピン為替情報】ペソ高進行、一時約5年ぶり水準

■これまでの動き
5月24日~6月4日

5月24日の米ドル・フィリピンペソ為替相場(オンショア・インターバンク市場)は市場参加者の様子見ムードが高まる中、前週21日の終値である1米ドル=47.945ペソとほぼ同水準の1米ドル=47.940ペソで取引を開始した。
前週の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨の発表により、米ドルの買い戻しの流れが強まり、終値ベースでは4月30日以来の米ドル高値である1米ドル=48.065ペソで取引を終了し、節目の同48.000ペソを回復した。
翌25日も米ドルの買い戻しの流れが続き、フィリピン株式相場も軟調に推移したことを受け、ドル高ペソ安が継続。米国産標準油種(WTI)の原油先物価格が再び1バレル=66米ドル台へ反発上昇したほか、月末実需のドル買いがドルを押し上げ、終値ベースで6営業日連続の米ドル高となった。

26日には一時、1米ドル=48.175ペソまで上昇するなど、4月末からの下落分の半分以上を戻す展開となった。
一部では海外投資家の資金流出も話題となり、ペソ売りが材料視されたもよう。27日朝方にはドル高地合いが続く中、前日の高値を超える1米ドル48.190ペソまで上昇したが、月末のドル買い一巡後は上値が重かった。
中国当局によるインフレ抑制策が好感され、人民元は対ドルで2018年5月ぶりの高値を付けた。連動してアジア通貨全般が堅調に推移したこともペソ買いに寄与し、節目を下回る1米ドル=47.985ペソで取引を終えた。

28日は米格付け会社S&Pグローバル・レーティングが、フィリピン信用格付を据え置いたことなどがペソ買いに寄与し、直近高値水準の1米ドル=47.800ペソで週の取引を終えた。
週明け31日は前週末終値1米ドル=47.800ペソからペソ高地合いが継続し、1米ドル=47.750ペソで取引を開始。フィリピン株式相場は前週の急反発を受けた過熱感から上昇一服となるも、楽観的な経済見通しを受けた株式相場への資金流入の思惑から、ペソ買い圧力は続いた。

原油先物価格は、年内に原油在庫が急減するとの石油輸出国機構(OPEC)プラスの見通しを受けて上昇した。月間ベースで2カ月連続の上昇となったことも材料視され、ペソ高が進み、2016年9月以来の約5年ぶりの水準を突破し、1米ドル=47.695ペソで取引を終了した。
海外時間には米連邦準備制度理事会(FRB)のブレイナード理事が「経済は目標にはほど遠い」、「今後数カ月でさらなる進展がみられると予想」と発言。6月のFOMCにおいて、テーパリング(量的緩和の縮小)が近いことが示唆されたが、市場の反応は限定的だった。

6月1日に発表されたフィリピンの製造業購買担当者景気指数(PMI)は、前月の49.0から49.9に改善し、一時は1米ドル=47.610までペソ高となった。だが、その後はペソ安に反転し、前日比0.065ペソ安の同47.76ペソで取引を終了した。
ペソ安として材料視されたのは、株式相場が先週の大幅上昇の反動から引き続き軟調に推移したことや、政府がマニラ首都圏や周辺州の外出・移動制限措置を延長したこと、さらに北海ブレンド(ブレント原油)価格が1バレル=70米ドルを突破したことだった。
ペソは5年ぶりの高値をつけて以降は、警戒感から買い進む動きに乏しかった。2日のフィリピン株式相場は大幅上昇となったものの、ペソ高による輸入コストの低下を受けたインフレ期待の低下から金利が低下し、アジア通貨も全般的に売られる展開の中、ペソも連れ安となった。

3日も原油先物相場が上昇基調を維持していることからペソ安となり、3日連続でドル高ペソ安の1米ドル=47.825ペソで取引を終了。4日は米雇用統計の発表を控え、材料待ちとなる中、様子見ムードが強く同47.750ペソで週の取引を終えた。

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この記事の監修

家村均
家村均

一般社団法人 フィリピン・アセットコンサルティング
エグゼクティブ・ディレクター
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慶応義塾大学経済学部卒業後、東急に入社し、海外事業部にて、米国・豪州・ニュージーランド・東南アジアなどで不動産開発や事業再構築業務に従事。
また、経営企画部門にて東急グループの流通・メデイア部門の子会社・関連会社の経営・財務管理を実施した。(約15年)
その後は、コンサルティングファーム(アクセンチュア)や投資ファンド(三菱UFJキャピタル)などで、企業や自治体の事業再構築、事業民営化等の支援や国内外のM&A案件のアドバイザリーを実施し、2018年10月より、GSRにて、日本他の投資家および企業、ファンドなどに対してフィリピン不動産への投資や事業進出のアドバイザリーを行っている。

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