経営者4割、回復に1~2年 半数が事業「深刻」、コロナ影響

大手会計事務所の英系プライスウォーターハウスクーパース(PwC)フィリピンの調査で、新型コロナウイルス禍により「経営状況の回復に1~2年かかる」と回答したフィリピンの経営者の割合が44%に上ったことが分かりました。感染拡大が事業に与える影響を「深刻」と捉える経営者も半数近くに上り、前年調査からほぼ横ばいでした。経済界が依然として大きい影響を受けていることが明らかになりました。
国内大手企業などの最高経営責任者(CEO)を対象に、4~5月に調査を実施し、フィリピン経営者協会(MAP)が協力しました。毎年9月に発表していますが、今年は前倒しで明らかにしました。
回答した経営者131人のうち、経営状況の回復の期間は「1~2年」が最も多く、「2~3年」と「1年以下」がいずれも18%で並びました。「3年」が5%だった一方、「影響を受けていない」は15%に上りました。
新型コロナに関わる懸念の程度については、「深刻な打撃を受け、懸念している」が47%に上り、前回調査の50%をやや下回りました。一方、サービスや製品への需要増といった「プラスの影響が出た」は11%にとどまりました。
政府が2020年3月から感染対策のため厳格な外出・移動制限措置を実施した結果、事業の一時閉鎖や縮小に追い込まれた企業が多かったです。20年の売上高の減少幅で最も多かったのは「11~20%」で21%でした。「51%以上」も11%に上りました。「減少しなかった」は20%でした。
従業員の感染も経営者にとって課題の一つです。「従業員の新型コロナ感染を確認した」と回答した経営者は84%に達しました。回復には従業員のワクチン接種がカギを握りそうです。政府は今年6月、医療従事者などに加え、企業の従業員らへの接種も始めました。
従業員の接種が完了する時期の見通しに関する質問では、今年の「10~12月期」との回答が49%と最多でした。「4~6月期」「7~9月期」と合わせると、約7割の経営者が年内の接種完了を見込んでいます。
感染対策の外出・移動制限措置は、緩和や厳格化を繰り返しながらも約1年5カ月続いています。政府は今月6日から20日まで、マニラ首都圏などで最も厳しい措置を敷いています。変異ウイルスで感染力が強いインド型(デルタ株)は懸念材料で、2021年後半の景気回復を左右しそうです。
ユニオン・バンクのチーフエコノミスト、ルベン・アスンシオン氏は取材に対し「中期的に見て、企業は事業拡大に慎重になるだろう」との見解を示しました。ただ、制限の効果が早く現れ、外出制限が予定通り20日に緩和されれば、企業にとって「良い兆候」になると指摘しました。

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この記事の監修

家村均
家村均

一般社団法人 フィリピン・アセットコンサルティング
エグゼクティブ・ディレクター
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慶応義塾大学経済学部卒業後、東急に入社し、海外事業部にて、米国・豪州・ニュージーランド・東南アジアなどで不動産開発や事業再構築業務に従事。
また、経営企画部門にて東急グループの流通・メデイア部門の子会社・関連会社の経営・財務管理を実施した。(約15年)
その後は、コンサルティングファーム(アクセンチュア)や投資ファンド(三菱UFJキャピタル)などで、企業や自治体の事業再構築、事業民営化等の支援や国内外のM&A案件のアドバイザリーを実施し、2018年10月より、GSRにて、日本他の投資家および企業、ファンドなどに対してフィリピン不動産への投資や事業進出のアドバイザリーを行っている。

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