フィリピンでインフレが急騰中

フィリピンのインフレ率は1月に14年ぶりの高水準にまで加速しました。特に、食品価格が高騰し続けています。
中央銀行(BSP)の利上げに拍車がかかりそうです。
フィリピン統計局(PSA)によると、1月の消費者物価指数は8.7%上昇し、フィリピンのビジネス紙が行った専門家への調査の推定中央値7.6%と、中央銀行(Bangko Sentral ng(BSP))の7.5%から8.3%の予測範囲を大きく上回りました。
これは、BSP が、ピークになると述べた12月の8.1%よりも高く、1年前の3%を大きく上回りました。

このインフレ率は、2008年11月に記録された9.1%以来の高い数値となりました。これにより、10か月連続でインフレ率がBSPの目標範囲である2~4%を上回りました。

前月比のインフレ率は12月の0.3%から1.7%に上昇し、季節要因を除いても、前月比で1%上昇しました。

変動幅の大きい食料と燃料の価格を除いたコア・インフレ率も、1月は7.4%に跳ね上がりました。これも 2000年12月の8.2%以来の高い数値です。

1月の猛烈なインフレは、2009年3月の11.3%以来最も高い11.2%の食糧価格の上昇によるところが大きいです。
食品のインフレ率は、主に野菜価格が、対前年37.8%上昇し、対前月でも10.6%と急上昇したことが原因です。

供給サイドの問題により、タマネギなどの主要な農産物の価格が上昇しました。
タマネギは食品バスケットの0.34%しか占めていないのですが、1月には132%価格が上昇したため、12.7%に押し上げられました。

住宅、水道、電気、ガス、その他の燃料やレストランや宿泊サービスの急速な増加も高インフレに拍車をかけました。
不動産オーナーが、経済の再開を反映して家賃値上げに踏み切ったことにより、パンデミック中に比較的低位安定していた住宅賃貸料が1月に大きく上昇しました。
住宅賃貸料のインフレ率は5%になりました。
家賃は、フィリピンでは通常1年間の賃料を設定するため、賃料の上昇は1年間の全体的なインフレに影響を与える可能性が高いです。
さらに、電気料金が22%、水道料金が6.6%上昇しました。

このように、農業生産の低迷とエネルギー価格の上昇など供給サイドからの価格上昇圧力がかかっていますが、同時に旺盛な消費による国内需要の急増からもインフレプレッシャーがかかっています。
堅調な経済成長により、レクリエーション(4.2%)、レストランと宿泊施設(7.6%)、パーソナルケア(5%)に関連するアイテムのインフレが加速しました。

13のコモディティグループのうち、アルコール飲料(12月の10.7%から10.9%)、家具と家庭用品(4.8%から5.2%)、衣料品と靴(3.9%から4.4%)、および健康関連(3.1% から 3.3%)などの価格が上昇しました。
一方、輸送(12 月の 11.7% から 11.2%)では物価上昇率が鈍化し、教育サービス(3.6%)、情報通信(0.7%)、金融サービス(0.7%)の年間インフレ率は変わりませんでした。

地域別では、マニラ首都圏(NCR)のインフレ率は、12月の7.6%から、1月には8.6%に上昇しました。
NCR以外では、消費者物価は12月の8.2%から8.7%上昇しました。

マルコス大統領は、インフレが上昇し続けていることは残念であると述べ、高インフレに対処するための措置を講ずるとしています。

また、ディオクノ財務長官は、政府のインフレターゲットである2.5~4.5%に2023年中に持っていくための取り組みを強化すると述べました。
ディオクノ財務長官は、「ペソが安定し、原油価格が下落し、台風などの自然災害がなければ、価格の減速は2023年第1四半期に始まると予想しているとしています。

供給側と需要側の両方の圧力により、今後数か月間はインフレが上昇し続ける可能性が高そうです。

そういった中、中央銀行は、インフレを政府目標に戻すことに重点を置いており、必要に応じて、さらなる利上げを実施すると見られています。
専門家の間では、2月16日の中央銀行政策決定会合で、最大50ベーシス ポイント(bps)の 引き上げの可能性があると見られています。

メダラ中央銀行総裁は、以前、第1四半期に利上げの一時停止の可能性を示唆していましたが、1月の高いインフレ率により、BSPは当面タカ派を維持する必要がありそうです。

中央銀行は、ベンチマークレートを350bps引き上げ、2022年には14年ぶりの高い金利5.5%に達しました。

さらなる利上げは、リベンジ消費による物価上昇圧力を緩和するのに役立つと見られます。一方フィリピン経済は、金利上昇の影響を吸収するのに十分な力を持っていると、フィリピン大手行BPIのシニアエコノミストは述べています。

中央銀行は、2023年の年間インフレ率を4.5%と見ていて、2024年には2.8%にまで緩和すると見ています。

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本記事は、下記ニュースを要約したものです。
https://www.bworldonline.com/top-stories/2023/02/08/503557/inflation-soars-to-fresh-14-year-high/

この記事の監修

家村均
家村均

一般社団法人 フィリピン・アセットコンサルティング
エグゼクティブ・ディレクター
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慶応義塾大学経済学部卒業後、東急に入社し、海外事業部にて、米国・豪州・ニュージーランド・東南アジアなどで不動産開発や事業再構築業務に従事。
また、経営企画部門にて東急グループの流通・メデイア部門の子会社・関連会社の経営・財務管理を実施した。(約15年)
その後は、コンサルティングファーム(アクセンチュア)や投資ファンド(三菱UFJキャピタル)などで、企業や自治体の事業再構築、事業民営化等の支援や国内外のM&A案件のアドバイザリーを実施し、2018年10月より、GSRにて、日本他の投資家および企業、ファンドなどに対してフィリピン不動産への投資や事業進出のアドバイザリーを行っている。

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