通信2社、5G投資を加速 競争力強化、遠隔医療にも商機

フィリピンの通信大手2社が、次世代通信規格である第5世代(5G)移動通信システムへの投資を加速している。政府が通信事業者の新規参入を推進したのを背景に、両社とも今年は設備投資を増やし基地局増設などを進めることで競争力を高める狙い。携帯電話の利用者のほか、先端工場や遠隔医療といった幅広い分野で5Gの活用を促し、収益基盤の強化につなげる方針とみられる。

2021年の設備投資は、PLDTが前年比で最大28%増の880億~920億ペソ(約2,000億~2,090億円)、グローブ・テレコムが16%増の約700億ペソを計画している。両社とも20年に5Gサービスを開始しており、今年は一段の通信網の拡大に力を入れる方針だ。
PLDT傘下で携帯電話サービスを手掛けるスマート・コミュニケーションズは、全国で5Gの商業利用を加速させることを目指し、5G基地局を3,800カ所に増やす計画だ。5月時点での5G基地局数は3,000カ所以上に上り、マニラ首都圏の屋外での5Gカバー率は90%以上に拡大した。
グローブの5G基地局数は3月末時点で1,383カ所に増えた。2月末時点で顧客の約50万人が5G対応端末を使用しており、2月の5Gデータ通信量は20年9月比で24倍の416.76テラバイト(TB)と、利用が急速に広まっている。

フィリピンでは中国製のスマートフォンが多く流通しているが、低価格帯の5G端末も流通し始めているようだ。端末の価格が下がれば、通信会社が提供する5Gプランの契約者が増えることが見込まれる。
通信会社にとっては、5Gのインフラ整備拡大でさらなる商機も期待できる。世界のスマホ事情に詳しい田村和輝氏は「将来的に5Gの特長である高速通信を利用し、最先端の設備を備えた工場や遠隔医療など幅広い分野で利用できるようになるため、通信会社の収益基盤の強化につながると考えられる」と話す。

政府は大手2社の寡占市場を改善するため、通信事業で新規参入を促した。フィリピン企業と中国企業が合弁で設立したディト・テレコミュニティーは、「第3の通信会社」として今年3月からサービスを開始した。
ディトの通信網はまだ第4世代(4G)サービスにしか対応していないが、将来の5G通信網の整備に意欲を示している。先行する2社は5Gサービスの通信インフラを急ピッチで進め、顧客の囲い込みを目指す。

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この記事の監修

家村均
家村均

一般社団法人 フィリピン・アセットコンサルティング
エグゼクティブ・ディレクター
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慶応義塾大学経済学部卒業後、東急に入社し、海外事業部にて、米国・豪州・ニュージーランド・東南アジアなどで不動産開発や事業再構築業務に従事。
また、経営企画部門にて東急グループの流通・メデイア部門の子会社・関連会社の経営・財務管理を実施した。(約15年)
その後は、コンサルティングファーム(アクセンチュア)や投資ファンド(三菱UFJキャピタル)などで、企業や自治体の事業再構築、事業民営化等の支援や国内外のM&A案件のアドバイザリーを実施し、2018年10月より、GSRにて、日本他の投資家および企業、ファンドなどに対してフィリピン不動産への投資や事業進出のアドバイザリーを行っている。

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