フィリピン自動車工業会(CAMPI)とトラック製造業者協会(TMA)は13日、2021年1~6月の新車販売台数(乗用車・商用車合計)が前年同期比56.1%増の13万2,767台だったと発表しました。新型コロナウイルス感染拡大前の19年同期と比べると、8割近くまで回復しています。政府の感染対策が経済への影響を最小限に抑えるように修正されていることや、消費者心理の改善が後押ししているようです。
19年1~6月の新車販売は17万4,135台で、21年同期は76.2%の水準にまで回復しました。20年同期と比べると回復が鮮明です。自動車工業会のロメル・グティエレス会長は「各社は(販売増による)経済への貢献と感染対策のバランスを取ることに継続して取り組んでいる」と説明しました。
車種別に見ると、乗用車が前年同期比77.3%増の4万2,406台、商用車が47.8%増の9万361台でした。商用車のうち、大型トラック・バスが79.5%増と最も伸びています。
メーカー別に見ると、上位10社のうち9社が前年同期を上回っています。首位のフィリピントヨタ自動車(TMP)は78.9%増の6万3,758台で、市場シェアは48.0%でした。
新車販売がコロナ前の水準に迫っているのは、政府のコロナ対策が特定の経済活動に絞られたことが大きな要因です。感染対策が以前よりも明確になり、消費者心理の落ち込みが20年よりも小さくなっていることも後押ししているとみられています。
政府は3月末から5月中旬にかけ、マニラ首都圏と周辺4州の外出・移動制限措置を最も厳しくするなど、1ヶ月半にわたり厳格措置を敷きました。20年も3月中旬から2ヶ月半にわたり厳しい措置を敷いたが、今年は公共交通機関の運行を継続するなど経済への影響を最小限にできました。
消費者心理は最悪期を脱しています。フィリピン中央銀行によると、消費者信頼感指数は新型コロナの感染が拡大して以降、マイナス圏が続いているが、20年7~9月期に底を打ち、その後は下落幅が縮小傾向となっています。
新車販売を単月ベースで見ると、21年6月は前年同月比44.8%増の2万2,550台だった。コロナ感染拡大前の19年6月の3万1,950台には及ばないものの、回復傾向にあります。
将来に向け明るい材料も出てきています。自動車業界が懸念していた完成車(CBU)に対する緊急輸入制限(セーフガード)の暫定措置の適用について、政府は「輸入車の急増はない」との見解を示し、いずれ停止する可能性が出てきました。
暫定措置は2月から200日間限定で適用され、各社は販売時に預託金を徴収しています。グティエレス氏は先に、預託金の徴収が「消費者と業界の双方にとって負担になっている」と指摘していました。セーフガードが中止されれば、自動車業界にとって追い風となるでしょう。
この記事の監修
一般社団法人 フィリピン・アセットコンサルティング
エグゼクティブ・ディレクター
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慶応義塾大学経済学部卒業後、東急に入社し、海外事業部にて、米国・豪州・ニュージーランド・東南アジアなどで不動産開発や事業再構築業務に従事。
また、経営企画部門にて東急グループの流通・メデイア部門の子会社・関連会社の経営・財務管理を実施した。(約15年)
その後は、コンサルティングファーム(アクセンチュア)や投資ファンド(三菱UFJキャピタル)などで、企業や自治体の事業再構築、事業民営化等の支援や国内外のM&A案件のアドバイザリーを実施し、2018年10月より、GSRにて、日本他の投資家および企業、ファンドなどに対してフィリピン不動産への投資や事業進出のアドバイザリーを行っている。