大手財閥、長期成長へ足場 資金調達加速、コロナ後見据え

フィリピンの大手財閥が長期の成長に向け新たな足場固めに動いています。低金利を追い風とした資金調達計画の規模は計2,000億ペソ(約4,200億円)を超えます。国内経済が新型コロナウイルス禍で景気悪化に苦しむ中でも、財閥が手掛ける事業は堅調に推移しています。任期が1年を切ったドゥテルテ大統領後の政権やコロナ収束を見据え、幅広い事業に積極投資していく考えです。
財閥企業は国内の幅広い産業を主導し、生活に密着した事業も展開しているため、コロナ禍の影響を受けにくい側面があります。継続的な事業拡大に資金調達が必要になり、社債発行では数百億ペソ規模を段階的に発行する手法を採用し、長期戦略の中で着実に新規投資に向けた資金を集めようとしています。
みずほリサーチ&テクノロジーズのエコノミストによると「財閥企業は内需で稼いでいるケースが多く、2040年にかけて人口増加が続くことが確実視されているため、長期的な視点で資金調達に動いていると考えられる」と説明されています。
フィリピン中央銀行が政策金利を過去最低の年2.00%に据え置いている事情も大きく影響しています。景気回復に向かう過程で米国の金融政策に左右され、フィリピンも徐々に利上げの方向になるのではないかとの予測もでています。大手財閥は現在の低金利を資金調達の好機と捉えている可能性があります。
財閥アボイティス・エクイティ・ベンチャーズ(AEV)は今月、300億ペソの社債発行計画で、第3弾となる最大100億ペソ分が金融当局から承認されました。25年満期で年利3.3%、28年満期で年利4.1%の2種類。再生可能エネルギー事業に力を入れており、向こう10年間で1,900億ペソを投資します。
財閥サンミゲル・コーポレーション(SMC)は先月、500億ペソの社債発行計画のうち、第1弾として300億ペソを発行しました。満期は27年で年利は3.4%。非金融部門では、今年最大規模の社債発行となります。
フェルディナンド・コンスタンティノ最高財務責任者(CFO)は「(コロナ禍で)事業環境は厳しい」と指摘する一方、社債発行に対する投資家からの需要は高いとの見解を示しています。
サンミゲルは事業費約7,350億ペソの新マニラ国際空港(ブラカン国際空港)の開発を進めています。再生エネルギー事業にも重点を置き、全国で2次電池電力貯蔵システム(BESS)の設置を進めています。
サンミゲル傘下の石油元売り大手ペトロンも、最大500億ペソ相当の社債を発行する予定です。第1弾として180億ペソ相当を発行する見込みです。リマイ製油所での新たな発電所(出力4万4,000キロワット)建設やポリプロピレン工場の拡張に充てるとみられています。
財閥SMグループ傘下のショッピングモール開発・運営大手SMプライム・ホールディングスは2020年から、総額1,000億ペソの社債発行計画を進めています。今年2月には第2弾として、2.5年債と5年債を50億ペソずつ発行しました。新たな商業施設の開発や最大2万軒の住宅を開発します。
財閥ユチェンコ傘下の建設大手EEIは、計60億ペソの優先株を発行する計画です。調達した資金は政府のインフラ事業に充てられます。

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この記事の監修

家村均
家村均

一般社団法人 フィリピン・アセットコンサルティング
エグゼクティブ・ディレクター
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慶応義塾大学経済学部卒業後、東急に入社し、海外事業部にて、米国・豪州・ニュージーランド・東南アジアなどで不動産開発や事業再構築業務に従事。
また、経営企画部門にて東急グループの流通・メデイア部門の子会社・関連会社の経営・財務管理を実施した。(約15年)
その後は、コンサルティングファーム(アクセンチュア)や投資ファンド(三菱UFJキャピタル)などで、企業や自治体の事業再構築、事業民営化等の支援や国内外のM&A案件のアドバイザリーを実施し、2018年10月より、GSRにて、日本他の投資家および企業、ファンドなどに対してフィリピン不動産への投資や事業進出のアドバイザリーを行っている。

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